後ろ姿は両思い
「ありがとう。僕も、君の走っている姿、好きだよ」
「ありがとう」
彼は、私から好かれていることを知っている。
“走っている姿が好かれている”ことを知っている。
私は、彼から好かれていることを知っている。
“走っている姿が好かれている”ことを知っている。
私と君の、特等席は一緒。
私が走っている時は、君が後ろから私を見る。
君が走っている時は、私が後ろから君を見る。
後ろ姿だけは、両思い。
でも、私はそれだけじゃない。
走っている姿ももちろん好き。
でもね、私は後ろ姿だけじゃないんだよ。
誰も知らない。私だけが知っているの。