Black Survival ～希望亡き島～

第一章 始まり

一日目

【始まり】
ぼんやりと白い光が目に差し込んできた。
（眩しい…）
起き上がり腕で光を遮ろうとするとジャリジャリと金属が擦れる音がした。気がつくと手首と足首に鎖が巻かれていた。
（なんだよ…これ…）
辺りを見渡すと天井からは電球がぶら下がり、目の前の黒い壁には白いペンキで『D-4』と書かれていた。そして後ろには金属で鎖が止められていた。
（誘拐？されたのか？）
必死に思い出そうとするが何一つ思い出せない。
すると突然左手の壁が開き中から白衣を着た黒い長髪の女性が手にA4用紙くらいの紙を持って現れた。目の前に立つと持っている紙を横目で見ると
「え～っとこれが『ザン・ヒョンヌ』か…」
と呟いた。
（なんだよ、こいつなぜ俺の名前を知っている…！）
「あら？起きていたのね。」
「誰だ！お前！なぜ俺の名前を知っている！」
「あらあら？威勢が良いねぇ、これなら生き残れるかしら？私の名前はクレア、Drクレアよ。」
「そんなことはどうでもいい！さっさと鎖を外せ！」
「聞いてきたのは貴方なのに～せっかちな人。そうだ、飴食べる？」
クレアは白衣のポケットから赤いビニールで包まれた飴を取り出し、目の前に差し出した。
（なんだこの女！何が飴だ！）
「いらねぇよ！聞こえないのか？鎖を外せって言ってんだよ！」
「イチゴ味は嫌いなのか～仕方ない。」
クレアは包装紙から飴を取り出しひょいと口の中に放り込んだ。
「何が目的だ？」
「お～！察しが良いねぇ！よしよ～し。可愛いやつめ！」
と頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
（このクソ女！）
殴ろうと右手を出したが鎖が張って当たらなかった。クレアは一歩下がるとわざとらしく両手を振って驚いた。
「お～怖い怖い～。本当に威勢が良いわぁ～。」
「てめぇいい加減にしろ！」
怒鳴りつけられるとクレアは手をピタリと止めて、白衣のポケットから手のひらサイズの小さな機械を取り出すと、さっきとは違い大きな声で
「なぜ、貴方がこんなことになってるか知りたい？知りたいなら大人しく座って。」
歯ぎしりをしながらあぐらをかいた。
「よし、では話そう！君は今日の明け方くらいにこの島に送られてきた。今回君にして欲しいことはこの島で生き残ること。サバイバルだね。ちなみに島には他に9人がいるよ。最後の一人になるまで戦って貰うよ。」
（そういうことか…なるほど。）
「だから喧嘩に強い俺が連れてこられたのか？」
「自分で強いって言っちゃうか～。面白いね君。まぁそうだね、他の人達は強いのは喧嘩じゃないけどね。」
「！？どういうことだ！」
「貴方以外はぜーいん、殺・人・鬼だよ。9人全員～！」
（嘘…だろ…！）
「生き残れるわけないだろ！相手は殺人鬼だぞ！分かってんのか？」
「私には関係ないし」
「てめぇ！」
立ち上がり殴りかかろうとすると腕を摑まれた。普通の女性では出せない握力だ。
「私は君が生き残るために今から3つのアイテムを渡す。1つ目手袋」
腕から手を離すと白衣の内側から薄汚い手袋を取り出し床に落とした。
「次に2つ目このスマホ。」
持っていた機械を床に置いた。
「最後に3つ目、ペットボトル飲料。」
腰からペットボトルを取り出し床に置いた。
「私はもうこれ以上できることはないわ。幸運を祈るよ。Mrヒョンヌ。」
とスタスタと扉に戻っていく。
「おい、まて！話しは…」
ヒョンヌのことを無視して扉は閉まった。
「あのクソ女！これでどうしろってんだよ！」
地団駄を踏むとガチャリと鎖が外れた。仕方なくクレアが置いていった物をとりあえず拾いポケットにしまう。
スマホを拾うと画面には白いでこう表示されていた。
『絶望の果てまで到達したポーンに全ての栄光を』
（どういう意味だ？ポーン？）
考える暇もなくガコンと床が揺れると目の前の壁が開いた。外の光が差し込む。手に持っていたスマホにはさっきの文字は消えて代わりに上から見た島の地図が表示された。
（何でだ…殺人鬼で溢れた島なのにどうしてこんなドキドキするんだ？怖いとはまた違う、まるで…まるで初めてのスロットの時みたいに…！）
ヒョンヌは外めがけて歩き出した。もう動くしかない。絶対生き残る。

『生存者残り10人』