高嶺の花君(はなぎみ)
今日もいつものように花壇に水をやる。


花と接する中で、この瞬間が実は一番好き。

私には花が目一杯に水を浴びたくて、もっともっとって背伸びをしてるように見える。

水浴び中の花達は本当に嬉しそうで生き生きしてて、花びらや葉に残った雫が太陽の日差しで輝く。

まるで自分の子供のように可愛くて愛おしい。



「お!今年も咲いたな、向日葵」



一人で口元に笑みを浮かべながら水遣りをしていると、突然明瞭な声が聞こえて身体が小さく跳ねた。


一気に加速する鼓動。

振り返らなくてもわかる。
この低くて、耳触りが良くて、優しい口調は……


高嶺の花君(はなぎみ)しかいない。



散水ホースのレバーを離して水を止め、ゆっくりと振り返る。



「小泉先生っ……」



そこには真っ黒に日焼けしたジャージ姿の小泉高嶺先生が、首に掛けたタオルで汗を拭いながら歩いてくる所だった。




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