高嶺の花君(はなぎみ)
一度、聞いてみたことがある。



『先生は花が好きなんですか?』



あまりにも優しい顔をするから聞いてみたくなった。

先生はその質問に、口の端を上げて目を細めながら答えた。



『好きだよ』



笑顔が眩しかった。
花にまで嫉妬してしまった。

言われてみたい。
私も先生に、好きだよって……


でも、そんなの無理な願いってわかってる。


だって、先生は高嶺の花。


大人で、格好良い。
学校でこんな人気なんだもん。

学校の外でだってモテるに決まってる。

私みたいな童顔寸胴偽少女が、先生みたいな完璧な人と釣り合うわけがない。


手を伸ばしても届かない。
こんなに近くにいるのに遠い。



初めて人を好きになったのに、この恋は報われない。

不毛な恋。

何度も諦めようと思った。
だけど、気持ちは止まってはくれなかった。





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