高嶺の花君(はなぎみ)
「熱はないな。って、顔赤いぞ?具合悪いか」



先生は私の胸の内になんて気付くわけもなく、今度は心配そうに眉を寄せて私の顔を至近距離で覗き込んできた。



「せ、先生っ…!大丈夫です!私、全然具合悪くないんでっ」



もう心臓が限界。

手のひらを振りながら先生と距離を取ると、私は自分を落ち着けるためにその場にしゃがんで色とりどりの花壇に目を向けた。



「ならいいけど。これからもっと暑くなるから気を付けろよ」



そう言って、ぽんっと大きな手のひらが頭に降りた。

触れた部分が熱い。
日を浴びて熱くなったのとは違くて、頭からつま先、身体の奥まで温かいものに包まれる不思議な感じ。


ああ……優し過ぎます先生。


教師と生徒ってだけで好きになっちゃいけない存在なのに、尚且つ高嶺の花君で不毛な恋。


これ以上、好きにさせないで下さい。


先生の姿が見れるだけで嬉しくて。

先生の話をするだけで楽しくて。

先生が笑うだけで幸せで。

先生と目が合うだけで泣けてくる。


これ以上好きになったら、私もうこの気持ちを隠していく自信がないよ……



< 8 / 12 >

この作品をシェア

pagetop