短編:雨上がりの虹を見るために
「っ! ……信、なんで」


 驚いて目を見張る私の前にずかずかとやってくる。


 ……やだ、こないで。


「それは俺の台詞。なんで泣いてんの」


 ……こんな私を、見ないで。


「話してみろよ。俺たちは親友だろ?」


 私の前にしゃがんで、ぎゅうっと抱き締めてくれる。おまけに頭をぽんぽんと撫でてくれて。こいつにだけは、子供扱いなんてされたくないのに。







 涙が、止まらなくて。







 叫ぶように泣いた。







 泣きながらあったことを全部話して。







 いまだけは、このぬくもりに自分を埋めていたい。少しだけって、わがままを言って。


 嫌いなのに、大っ嫌いなのに。私を抱き締める手はどこまでも優しさに溢れていて、私の名前を呼ぶ声はどこまでも暖かい。
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