【BL】お荷物くんの奮闘記
 その魔王の力によって構成された魔法は、人間ではない種族が元々持っている力で編み出された魔法よりも力が大きく、下克上は難しいのだそうだ。行使できる魔王の力の大きさは人間の血の濃さによって決まり、たとえ魔力が高いとされる魔族と人間のハーフであっても純粋な人間の力には敵わないらしい。


 そうやって、人間の国を中心に世界は回る。その輪の中に入れない他種族は田舎に追いやられ、その肉体の強靭さから労働力として使われているというわけだ。ここは魔の者の暮らす村、魔の要素が大きかったために人権を得られず、郊外で働かされている者たちの村なのであった。


 本来であれば、イベント進行キャラクターに話しかける前に他のキャラクターに声を掛けて驚かれたり警戒されたりといった反応をされることによって、この世界での常識を少しずつ得てイベントに臨むのだろうが、すっ飛ばしてしまったものはどうしようもない。


「なるほどなあ。確かにオレは世界が違うわけだし、普通に人間だけど」


 異世界の人間がこの世界の人間のように魔王に祝福されているかというと、謎である。魔法の使い方も分からない。念じれば出るんだろうか。後で試してみよう。


「世界が違う、とは……」


 呟きに近い言葉に、村長が反応する。


「信じてもらえるか分からないんだけど、オレ異世界から飛んできたんだ」
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