【BL】お荷物くんの奮闘記
 木造の廊下を歩いていた足音が、扉の前で止まる。何を躊躇っていたのか、少しだけ時間を置いてリュータが部屋に入った。


「……ユウジ?」


「起きてるぞ」


 座っているベッドの方から手招きをしてやると、後ろ手に扉を閉めた彼がのそのそとこちらに歩み寄ってくる。


「えっと……その」


 話をすることに意識が行ってしまったのだろう、髪は濡れたままろくに拭かれもせず肩にかかったタオルの上に雫がぽつぽつ落ちて染みを作っている。隣に座らせてタオルを奪う。広げて彼の頭に被せた。


「わっ」


「ほら、今オレからおまえの顔は見えないぞ。ついでに頭拭いてやるから、話したいことがあるなら話せ」


 タオル越しに髪を撫でる動きにつられて、彼の頭がぐらぐら動く。


「……話がしたいっていうのは、ほんとは半分くらい口実で、ユウジがちゃんとここに居てくれたら、別におれを待たずに寝ちゃってても良かったんだ。……ううん、そうだったらいいなって思った」
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