【BL】お荷物くんの奮闘記
 このダンジョンのボスと遭遇したのだろう。中から男達の悲鳴が聞こえるが、殺気立って追いかけ回してきた人間を助ける義理はない。


 さて、ボス部屋の扉は中でボスが倒されれば自動で開く可能性がある。万一ボスが彼らに撃破される可能性を考えて、この場はさっさと立ち去るに限る。


 ここまででスマホを駆使しまくったが、マップ確認のためもう一度画面を開くと電池残量は変わらず九十八パーセントだった。


 そもそも朝家を出た時に携帯の電池残量が百だったのが、昼までの四時間程度で二パーセントしか減らないというのもおかしな話だ。リュータとメッセージのやりとりをしたり、電車の時刻表を調べたりとそれなりに携帯を使用していたのだから、本来であれば草原に来た時点で残量は八十五くらいになっていたはずである。夢のご都合展開ということで、有り余るバッテリーはありがたく使わせてもらうことにする。


 それにしても、ここまでで一度も雑魚モンスターらしきものに出くわさなかった。プレイヤーが武器を得るまで雑魚は出ない仕様なのだろうか、盾だけで魔物の群れを切り抜けて武器を得なければならなかった某ゲームの緑色の主人公を思い返す。


 気を取り直して、勇者の剣――というか判別アイテムを代々受け継いでいるという種族の住処を目指すことにする。ボスマーク以外これといって目印のないダンジョンマップとにらめっこしながら、これまで進んでいなかったルートを選んで潜っていく。
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