【BL】お荷物くんの奮闘記
「あー、たぶんヴェルターが言ってた、反社会組織……歴史上の大賢者を信仰するやつらだろうと思う」


「大賢者を信仰?」


「あれ、師匠聞いてねえの?」


 いつも自分の腕輪に居るものだから、てっきり会話はすべて聞かれているものだと思っていた。加えると彼は、最近どうも眠くてな、とはぐらかしてくる。会話の盗み聞きができるか否かについては否定しないらしい。わりとプライバシーの侵害だと思うんだけど。てかこの腕輪いつ外れるんだ。


「大賢者を名乗る人間を探し出しては本物かどうか判別して偽物だったら制裁を下すみたいな連中でさ、拉致被害も出てて迷惑だから全員捕まえろっていうヴェルターの仕事に付き合ってここにきたんだよ」


「……ほー、そら大層なことで。で、今まさに拉致られかけてるってことか」


「いや、流石にそれはないって師匠。駆け出しのぺーぺーだぜ、大賢者なんて名乗ったこと一度もねえし」


 この世界の滞在中に、自分がそんな大層な肩書きを入手できるとは到底思えない。


 そこでふと、レツに「大賢者を名乗る師匠がいるなら中央都市では気をつけろ」と言われていたことを思い出した。


「……そういや師匠、会った頃大賢者と呼べとかなんとか言ってなかったっけ」
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