【BL】お荷物くんの奮闘記
 面倒な事態だが、そもそも師匠が出ていって直接説明なり神託を演じるなりしてくれれば戦闘なしで解決するだろう問題のような気がしてきた。しかし、それには師匠が首を振る。


「いや、そりゃ無理だ」


「なんで?」


「オレのことはユウジ、今んとこ、おまえさんにしか見えてねえ」


 例外はあるが、この腕輪を装備してるおまえ以外で普通の人間にオレを視認できるやつはいないだろうな。続けられた言葉によって淡い期待が打ち砕かれた。





 探索が難航することはなかった。道なき道どころか右三歩先の木に突っ込めだの岩に全力でぶつかれだの、まるでバグ探しのような非正規ルートを指示される通りに進まされることを「難航しなかった」と表現していいのかは微妙なところだが。


 森の見た目をした迷宮の端にやっとの思いでたどり着いた途端、師匠は再び腕輪の中で沈黙してしまった。彼が居なくなったということは、本格的にこの結界の術者の近くまで来ているのだろう。


 思えば魔法使い同士の戦闘などここまで一度も経験してない。旅路ではもっぱら魔物相手の戦闘だったのだから当然ではあるが、同じく魔法使いが相手となると騙し合い、化かし合いの戦闘になるだろう。

漫画やゲームの常識がそのまま適用できるなら後衛は知識量を武器にするもので、小細工の得意な者が勝利する。リアルラックに自信がないのなら気合いや熱血でどうにかなるとは思わない方が良いのだ。
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