【BL】お荷物くんの奮闘記
 たぶんあいつが術者で間違いねえ。奇襲作戦を企てておきながらまさか術者本人ですかなどと面と向かって訊きに行くわけにもいかない。……間違っていたら素直に謝ることにしよう。


 防御姿勢を取られるか避けられる前に攻撃に出ることができる距離までは慎重に詰める。まだこちらには気付かれていない。いける。勇者の剣を抱えて標的まで走り出し――、爪先が木の根に引っかかった。


 あー!


 ああー!


 ばかやろー!!


 足下を確認しなかった自分から重要なところでステータスのラック値を下げてくる運命の神様、挙げ句地面から元気に突き出ていた木の根にまで一瞬で恨み言を列挙しながら地面に顔からダイブする。

受け身が取れなかったのは自分の反射神経のせいだが、どれだけ上手い受け身を取ろうとも転んだ時点で既に奇襲は失敗である。


 そして前述のとおり、戦闘になったら勝ち目は無い。こうなったらどうにか取り入って隙を見て逃げるしか。地面にしこたま打ち付けた額を押さえながら顔を上げると、目の前にフードの男がやってきていた。
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