【BL】お荷物くんの奮闘記
「お怪我は?」


「……えっと、ないです」


 フード男が顔を見せる。ものすごい美男子だった。ヴェルターと比べるほど堅物ではなさそうだが、口元がへの字に引き結ばれている。耳の先が尖っていることからして、人間ではなく魔の血が流れた者なのだろう。銀髪に紫の目、理知的な美形で紳士キャラときた。

こってこての定番要素を凝縮したファンタジー的イケメンは、真面目な表情でこちらに手を差し伸べてくる。


 特に他意はなさそうである。警戒しながらもその手を取ると、まるで深層の姫君でも相手にしたかのような所作で引き寄せられた。


「やはり生きておられたのですね、大賢者様」


 あっこれ勘違いされてる方だ。大賢者の秘技を盗んだ悪者と見られるよりはましかもしれないが、ここでへたに誤解を解こうとすれば一気に扱いが逆転するだろう。


「幾千、万年の長い時の間、お帰りをお待ちしておりました」


 流れるように回復魔法をかけられて、転んで擦りむいた顔と膝はあっという間に完治する。


「あ、ありがとう……?」


「いえ、差し出がましい真似をいたしました」
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