【BL】お荷物くんの奮闘記
 確かに自分でも治癒は可能だ。しかしMPの節約を考えると、やってもらって悪い気はしない。


「今でも貴方をお慕いしております者達の元へ、お顔を見せていただけないでしょうか」


 へりくだった言葉で訊ねられてはいるが、後衛にしては強い力でがっしりと掴まれた手が離される様子はなく、拒めそうにもない。自分一人で反社会組織の本拠地へ進むことになったが、自分達の当初の目的は本拠地への潜入である。

リュータ達が自分を捜すよりも先へ進むことを優先してくれていれば、そこで合流もできるかもしれない。


「ああ、……オレでいいなら」


「我らの拠点へ貴方をお連れすることができて光栄です」


 イケメンが笑うとさらにイケメンだ。いかにもなファンタジー世界の住民感漂う見た目のおかげで現実離れしていて、その外見に妬ましさを感じなかったのは良かった。


「中央都市にて拝見した大魔術、感服いたしました。あのお姿を見て我らの同志となった者も現れております。こちらへご足労くださっていると知り、僭越ながらご案内に参った次第」


 手を引かれながら、結界の端で一歩踏み出す。外に抜けたのだろう、周囲の景色が森から一瞬にして岩山に変わった。


 前を歩く男は、直接お迎えする権利を巡って口論になりかけたほどだと心底嬉しそうに語っている。
< 185 / 394 >

この作品をシェア

pagetop