【BL】お荷物くんの奮闘記
 いやオレもできないけど。胸中ノアの過剰期待に突っ込みながら、スマホでフィールドマップを確認する。東のエリアへはまだ行ったことがないから、マップの東方地域はグレーアウトしていてあまりあてになりそうにない。

運良く道中でマップの更新ポイントが見つかればいいが、そうでない場合はこの東国の使者に頼りきりになる。ペース配分が掴みにくそうだ。


 大勢の見送りにひきつった笑みで手を振って拠点を後にする。ヴェルターが何か言いたさげだが、詰られるに決まっているのでそ知らぬふりである。


 案内役の話によると、ここから東国までは休みながらの徒歩で二日ほど。途中で敵に遭遇するとさらに時間をロスするだろう。術者の一度行った場所であればノアが移動魔法陣でワープできるようだが――そしてそれを自慢げに話していたということは、おそらく大賢者のオリジナルスペル。

自分が師匠であったなら同じく自分も使えたはずの魔法だが――あいにくこの場で東国に滞在したことのある者は案内役の男のみである。


 自分が師匠だったら。先日からどうも、その詮無い仮定が頭から離れない。自分が大賢者……ユウであったなら、リュータはどうだったろう。


「ユウジ、どうしたの? 疲れてる?」


「ん? あーいや、昨日の夜面白い本見つけてな、つい読み込んでて寝不足なんだよ」


「……そっか。きつかったらおれ抱えて歩けるから、言ってね」


「さすがにそれは遠慮したい」


 落ちたら死にそうな崖で中学生に横抱きにされ無理心中させられかけた恐怖体験を思い出して、思わず青ざめる。

結果からしてあの程度の崖なら無事に着地できると確信しての行動だったのだろうことは分かったが、危険がどうこうではなく、四つ年下の弟分の腕の中という点だけでもなかなか情けない。
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