【BL】お荷物くんの奮闘記
ほれ、と彼のコントローラーを奪って、オプションで勇者のプレイヤー名を「リュータ」に変更してやった。その直後、一階の母親から呼ばれて一度席を外した。「買い物に行ってくるけど、竜太くんおやつ何が良いか訊いておいて。欲しいものがあったら携帯に連絡してね」とのことだ。
戻ってくると再び戦闘に入っていたゲーム画面には、先ほど変えてやった勇者の名前――リュータと、魔法使いの名前が表示されていた。
「いや、なんでわざわざ魔法使いオレの名前に変えてんだよ。それこそデフォルトの「マルク」でいいじゃん」
言いつつ隣に腰掛ける。一緒が良いとかいう理由なんだろうなとなんとなく推測してにやにやしながらからかい口調で指摘したはずが、リュータはその時だけ、見たこともない優しい目で笑って返したのだ。
「おれの魔法使いはユウジだよ。ずっと」
小学生のその笑顔がどこか大人びて見えて、思わず目を逸らした。気恥ずかしくて見ていられなかった居心地の悪い感覚は今でも覚えている。
「もうそろそろ魔法使いはやめてくれよ。種明かしだってしてるだろ?」
「でも、ユウジ以外の魔法使いなんておれはいらない」
「まあゲームだし好きにすりゃいいけどさ」
どうして今になって、こんなのを思い出すんだろう。
彼が望む魔法使いは本当は自分ではなくて、自分の向こうにいる別の誰かで。
彼の望む魔法は、自分なんかが起こせる程度の低い奇跡とはほど遠いものだったのに。
気付いていなかったのは自分の方だった。
ふいに大人びた笑顔のわけも、魔法使いに拘った理由も、今なら正解に手が届く。
今さら、だ。
師匠は――ユウは、もうリュータには会っただろうか。あれからどれくらいの時間が過ぎたのか、夢の中を漂うような中では見当も付かない。
戻ってくると再び戦闘に入っていたゲーム画面には、先ほど変えてやった勇者の名前――リュータと、魔法使いの名前が表示されていた。
「いや、なんでわざわざ魔法使いオレの名前に変えてんだよ。それこそデフォルトの「マルク」でいいじゃん」
言いつつ隣に腰掛ける。一緒が良いとかいう理由なんだろうなとなんとなく推測してにやにやしながらからかい口調で指摘したはずが、リュータはその時だけ、見たこともない優しい目で笑って返したのだ。
「おれの魔法使いはユウジだよ。ずっと」
小学生のその笑顔がどこか大人びて見えて、思わず目を逸らした。気恥ずかしくて見ていられなかった居心地の悪い感覚は今でも覚えている。
「もうそろそろ魔法使いはやめてくれよ。種明かしだってしてるだろ?」
「でも、ユウジ以外の魔法使いなんておれはいらない」
「まあゲームだし好きにすりゃいいけどさ」
どうして今になって、こんなのを思い出すんだろう。
彼が望む魔法使いは本当は自分ではなくて、自分の向こうにいる別の誰かで。
彼の望む魔法は、自分なんかが起こせる程度の低い奇跡とはほど遠いものだったのに。
気付いていなかったのは自分の方だった。
ふいに大人びた笑顔のわけも、魔法使いに拘った理由も、今なら正解に手が届く。
今さら、だ。
師匠は――ユウは、もうリュータには会っただろうか。あれからどれくらいの時間が過ぎたのか、夢の中を漂うような中では見当も付かない。