【BL】お荷物くんの奮闘記
 あれでリュータは疲れているだろうから、できればすぐにたたき起こすようなことはせず朝まで見守っておいてほしいものだが、この場所からでは口出しもできそうにない。

自分のものだった手で、彼の頭を撫でて、話があるから起きろと声を掛けて。

目を覚ますリュータは、それが今まで十年ぽっちを一緒に過ごしたユウジではないことにすぐに気付くだろうか。前世の記憶を思い出したのかと喜ぶに違いない。

その代わりに現代での記憶が曖昧になったとかなんとかでうまいとこ誤魔化してくれればいいが、師匠のことだから何もかも打ち明けてしまいそうだ。


 自分のものだった口で声で、何を話すだろう。

すれ違ったまま長い時間を後悔とともに過ごしてきた二人は、次に会う日が来るのなら話したいこと、訊きたいこと、来ないと諦めながらきっと山ほど用意していた。

満足のいくまで言葉を交わして、そうしてひょっとしたらそのまま、互いに触れ合うのかもしれない。


 リュータ。今はちゃんと笑えてるか。あんな、絶望でぐちゃぐちゃになった上で遠くを見つめるみたいな、寂しい笑顔なんかじゃなくて。


 二人並んでテレビゲームに熱中する、過去の記憶に意識が重なる。


「おまえの魔法使いは、ユウジじゃないだろ」


 夢の中みたいなものだからだろう。あの頃小学生だったリュータに、中学に上がったばかりの自分として言葉を紡ぐことができた。
< 262 / 394 >

この作品をシェア

pagetop