【BL】お荷物くんの奮闘記
 ――それから、ユウ。


 スマホの方のストーリーログには、ダイゴによる音のないメッセージが流れている。

受け取るべき相手はとっくに居なくなっているというのに。


 ――これを見てるってことは、オレは帰れなかったのかな、おまえのとこ。


 いろいろ黙っててごめんな。


 一緒に暮らそうって話も、言い逃げになっちまった。


 守れなくてごめん。


 けど、本気だったよ。


 本気だよ。……今でも。






 書き換えを終えて、神殿の最上階フロアに戻る。

ダイゴが自らこの地点での書き換えを行えなかった理由は、四カ所あったアクセスポイントがすべて神殿で、勇者の旅の終盤にならなければ神殿への道が開かれないからだった。

ユウの願いによって勇者システムが一部狂い神殿は出現したままになっているが、本来であれば魔王を倒す直前、最終決戦を控えた段階でなければ神殿は大陸に姿を現さない。

すでにバグに侵されていたダイゴは、終盤まで待っていては自分の身体が保たないことを悟って、後のために奔走していたようだ。


 風雷の神殿のデバックポイントで閲覧・編集ができたのは大陸――フィールドに関してと、キャラクターの透過・不透過に関して。

この世界がRPGだと仮定して、ゲーム内で話しかけたらセリフを返してくれるようなオブジェクトにいわゆるあたり判定を加えるか否かの操作だけだ。

うっかり判定レベルを引き上げると俗に言う幽霊の類まで実体化させかねないと知って慎重になったが、逆に考えるとここでこの程度しか編集できないのも不思議だ。
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