【BL】お荷物くんの奮闘記
「転送魔法でカインだけが戻ってきたから、心配で」


「そりゃ悪かったな。まあ、目覚めたんならよかった」


 リュータが寝こけていたので目印がわりに置いてきたわけだが、どうやら置いていった直後に目が覚めていたようだ。プロフェットから状況を訊いて追ってきたのだろう。

いやおまえまで来ると何かあった時に合流魔法陣では脱出できなくなるんだけどな。


「ここ、なに? さっきまで戦ってた場所とは違うみたいだけど」


「さっきの場所だよ。どうも、このフロア自体がデバックポイントだったらしい。

今出ちまうと一緒に崩壊して二度と入れなくなりそうだから、どうにかしてポイント移せねえかなと思ってさ」


 ざっと説明してみたが、変わらずリュータは難しい顔で首を傾げている。


「えーとだな、魔王のすごい力はこの部屋で扱えるんだけど、この部屋が落っこちて崩壊したら、現代に帰るために必要な魔法とかも使えなくなるかもしれないだろ」


「なるほど。じゃあ、今からその魔王の力を使ってこの部屋が落っこちても壊れないようにするんだね」


「だからどうにか別のポイントにこの部屋の機能を――あ、そうか、そっちのが明らかに楽そうだな」


 難しく考えすぎていたのはこちらの方だったようだ。

頭を悩ませるまでもない。この場所で行えるのは変数管理と、カインによって破壊されたと思われる冥地の神殿のステータス管理。

このフロアの建物の外部・内部強度をとりあえずでたらめな数値にまで強化して――九八七六五四三二一二三四五六七八九とかいう数値にしてみた――、搭乗者、自分たちのラックを一時的に最大に上げる。

変数・乱数管理機能でリスク確率をゼロに引き下げて編集完了である。
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