【BL】お荷物くんの奮闘記
 現代に生きる人間は三次元の存在で、アニメやマンガ、ゲームなんかのキャラクターはいわゆる二次元の存在という表現をされる。

二次元のキャラクターの愛好家が三次元に存在しても、二次元の内部にいるキャラクターが三次元の存在に直接コンタクトを取ることはできない。

当然だ。二次元の存在は、「意思はなく」「生きてなどいない」のだから。

ただの点と線で表された架空の存在。

個々を個として見ることがないから、三次元に生きる人間たちは自分の支配下において二次元の世界を好きなように空想し、その中で彼ら、彼女らを生かし、殺し、愛で、あるいは忌む。


 しかし、ゲームやマンガの発展した日本に生まれていれば、一度は考えたことがあるはずだ。

もし二次元の世界が本当に存在したら、もしマンガ本の用紙のその内側で、テレビゲームの液晶の中で、その世界が実在していたら。

箱庭の中で、セーブデータを削除したゲームの世界はどうなっただろう。

魔王を倒す前に飽きてしまったゲームの、悪魔の跋扈する状態で放置された世界はどうなっただろう。

マンガの作者が急病で亡くなって、連載が終了してしまった世界で必死に生きようとしていた主人公は。


 つまりは、そういうことだ。


「……あんたらがへったくそなプログラミングするから、システム内部の人間使ってバグの後始末させようってことか」


 今までは放置しておける許容範囲内の訂正だったが、カインがよけいなことをしたおかげで引き継ぎがうまくいかず、あちら側でエラーを吐いたから様子を見に来たというところか。

こちらの問いに、マムが首を振る。


「渡部勇次。あなたなら分かるはずです。あなたたちだって、自分たちの管理下にある下位の存在が不審な動きを見せれば原因を探るはず。

そうして、解決が不可能となればその箱庭ごと廃棄し、作り直す」
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