【BL】お荷物くんの奮闘記
 リュータがしびれを切らしてレツに向けてその場にあった絵の額縁を掴み、彼の後頭部めがけて全力投球した。

きれいに線を描いてレツの頭にクリーンヒットするが、レツもレツでいってえー! と楽しく笑いながらまだ逃げ続けている。

彼の足下で投げられた絵画が無惨にひしゃげていた。

次に投げつけたのはMP消費で生成した例のふつうの剣だ。

刃物の投擲はさすがに回避せざるを得ないのだろう、ものすごい高速で迫り来る剣の切っ先をレツがひょいと避けた。

剣は置いてあった壷を破壊し窓を突き破り、その先の庭の木に突き刺さる。あれ人間に当たったら貫通するんじゃないかひょっとして。


 魔族もびっくりな頑丈さの二人が妨害ありの本気の鬼ごっこを長時間続けていては、城の修復が面倒だ。

どうしようか。カインにアイコンタクトを送ると、彼が察してくれたのか、任せてとばかりに親指を立てた。


 レツの走り回る進行方向に立ちふさがったカインが、何気なく両腕を広げる。

おいで。そう言ったが早いか、リュータとのエクストリーム鬼ごっこに夢中だったレツはさっさと切り上げてカインの胸に飛び込んだ。

いかにも「わーい」って感じだった。すげえ。今一瞬カインがレツの飼い主に見えた。受け止めきれなくてカイン倒れ込んでるけど。


 レツの下敷きになっているカインは、そのまま追ってくるリュータにも声をかけた。


「リュータ。君がレツとばっかり鬼ごっこしてるからユウジ寂しいって言ってたよ」


 言ってねえよ。カインを睨みつけるが、彼はにこにこ笑うだけである。

我に返ったリュータがこちらに近付いてくる。


「ご、ごめん……おれまた城壊しちゃった」
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