【BL】お荷物くんの奮闘記
 この世の終わりのような様子で震えている彼にはどうやら勘違いさせてしまったらしい。

考えてみれば今の流れ、喧嘩する生徒を叱責して後で職員室に来なさいのパターンに非常に似ている。

中学では他の生徒の模範になるようなよいこっぷり――やれと言われたことに忠実に従い、やってはいけないと言われたことをまじめに遵守しているだけであって、成績の方はあまりよろしくない――を発揮しているリュータからすればこういったシチュエーションには免疫がないのだろう。


「違う違う。お邪魔そうだったから退散しただけだ」


「お邪魔?」


「気にしたら駄目だからな」


 理解できていないリュータに念を押して、とりあえずベッドに腰掛ける。手招きすると彼も倣って隣に座った。


 危機感がないというか疑う気がないというか、やっぱりこいつをあんな場面に遭遇させるのはまだよろしくないなと思う。触り心地の良いリュータの頭を撫でて、それからなんとなく髪を梳く。


 ああでも、キスは、したんだっけ。


 髪から頬へ、指先を下ろしていく。くすぐったそうに瞼を閉じた彼の唇が目について、思わず手を引っ込めた。


「あっ、わ、悪い」


「ユウジ?」


 さっと視線を逸らす。今きっと自分はやましいことを考えている顔になっているだろうからあまり見ないでいただきたい。

体ごとそっぽ向こうとしたところ、リュータがシーツの上に手をついてこちらを覗き込んできた。
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