【BL】お荷物くんの奮闘記
 処刑。ものすごい早さで最悪の事態が迫ってきた。未だ脱出の手筈も浮かんでいないというのに、罪状の詳細も弁明の余地も与えられないらしい。


 腰に下げていた鍵で牢の扉を開け、ヴェルターが中に入ってくる。もし今拘束から抜け出していたとしても、やつを横切って牢から逃亡しようとすれば再び手刀の餌食になりそうだ。


 ヴェルターが屈んで、身体に乗り上げる形で髪を掴み上げる。


「答えれば、痛い思いをせずに済むぞ」


 どうしたって殺す気じゃねえか。無言を貫く。答える気がないのを読み取ったヴェルターが頭から手を離し、肩を踏みつけてくる。


「貴様が鉱山の中に閉じ込めた五人を覚えているか」


 あっ。そういうことか。


 全く身に覚えがなかったが、話に出されてようやく思い出す。


「その中に魔導師として、高貴なお方がおられた。閉じ込めたおまえを見つけ出し処刑せよとのことだ」


 ボス部屋から忽然と消えた、ボスと五人組。鉱山を出るまでは五人組が生きている可能性が高いと見ていたのに、とんだドジを踏んだものだ。


「……どうやら、痛い目を見なければ自分の名前も思い出せないようだな」
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