【BL】お荷物くんの奮闘記
 腹部を蹴られ、床の上を転がりかける。繋がった手錠で反動も殺せず咳き込んでいると、ヴェルターが牢を出て歩き去って行った。拷問の準備でもしに行ったんだろうか、鍵はしっかり施錠されたようだ。


 痛む腹部と手首を庇いながら半身を起こして、手錠を見た。取れる気がしない。手首にくっきりと痣ができている。


 取れる気がしないといえば、左手首に収まったままの妙な腕輪もそのままだ。現代の服の構造が分からなかったのか、服装検査もろくにされていない。手が束ねられているのが少々不便だったが、スマホも取り上げられていないのを確認する。


 ああ、何か不思議パワーで脱出できたりしねえかな。この妙な腕輪から魔法のランプの精みたいなのが出てきたりとか。


「ふふーん、困ってるみてえだな。オレ様が助けてやっていいぜ」


 手のひらサイズの男が、妄想の通りに腕輪からふんぞり返ったポーズで現れた。


「……出た」


「あ? 何の話だ?」


 そうだ。リアルに痛みもあるわ腹は減るわで忘れていたが、ここは自分の夢の世界。理不尽展開にはご都合展開で対抗することも可能なのだ。たぶん。


「まあいい。おいおまえ、オレ様のことは大賢者様と呼べ」


「嫌です」
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