【BL】お荷物くんの奮闘記
 大賢者を自称するちいさいおっさん――おっさんと呼ぶには若いのでちいさいお兄さんだろうか――のあまりの天狗っぷりに思わず脊髄反射で返事をしてしまう。


「てめ、折角脱出手段を教えてやろうってのに」


「えっマジ? なんか魔法のランプ的なやつで願いが叶ったりする?」


「オレ様は手段を提示するだけだ。自分でなんとかしろ」


 また中途半端なご都合展開である。めんどくせえなと自分の眠る脳みそに対して内心毒づく。


「手段って?」


「おまえさんに大賢者様直々に魔法を教えてやる」


「そりゃありがたいけど、今はそれどころじゃ」


「解錠の術と、離脱の術だけ今から必死で覚えろ。さっきの男が帰ってくるまでの時間でな」


 どうやら、この腕輪はどこかの魔法使いの思念だかデータだかが組み込まれたオートモード魔術書のようなものと考えていいようだ。無事に脱出できたら他の魔法も教えてやるよ。自信ありげにそう加える魔法使いの言葉は正直ありがたい。


 どのみち、リュータの助けは見込めそうにないのだ。やれるだけやってみてもいいだろう。


「……うっす。頼むぜ、師匠」


 お、師匠って呼ばれ方もなかなかいいな。そんなことを呟いてにんまりと笑うちいさい先生を、早く教えてくれと早速急かした。
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