【BL】お荷物くんの奮闘記
 そんな自分の願いが眠る脳みそに届いたのか、ふと顔を上げると前方に小さな村が見えてきた。その背後には大きな鉱山がそびえている。こちらから見ても田舎町っぽさが滲んで見えるが、この世界の住民と話が出来る絶好のチャンスだ。立ち寄るに決まっている。


 何かしらイベントが発生するのを期待しつつ、鉱山麓の町に向かって足を速めた。



 入り口付近に何やら町の名前らしき文字が書いてあったが、町の名前は読めなかった。日本語でも英語でもない。明らかに書き文字が異なっていて、大学で習いかけの独語、仏語でもなさそうだ。


 こういうのってだいたい異世界の言語も日本語で読めるようになってるもんじゃなかったか。町の人間と会話が成立するのか少々不安になりつつ先に進むと、町で耳にする人々の会話はそのまま日本語だった。書き文字だけが理解できない仕様らしい。ひとまずは安心である。


「あのー」


 通りがかった同い年くらいの男性に声を掛ける。振り返る男はこちらを見て、途端に一歩後退した。


「え?」


「……何故このような場所に高貴な方が」


 高貴な方。オレか。どうやらこの世界の貴族階級と外見が似通っているか何かで勘違いされているようだ。


「いや、たぶん人違いだと思うんすけど、ちょっと色々お話が聞きた」
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