『短編8P』愛の果て・歪む愛
遠のく意識の中、成美は男の顔を瞳に焼き付けた。
成美の体に馬乗りになり、夢中で首を締め上げる男の顔は上気して、平常心を失っている。
それは情熱にも似ていて。
歪んだ愛一一。
自分にふさわしいとさえ、成美は思う。
真っ直ぐ、そして熱く自分を見下ろす男を、成美は改めて「愛しい」と思う。
一粒の、涙が落ちた。
『……ありがとう……』
成美の最後の言葉は音にならない。
成美の愛も、命も、最愛の男の手の中で儚く消えていく一一。
その瞬間、成美は確かに幸せだった。
『完』
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