思い出屋さんのゆううつ
 男の子とヨモギさんはお家で気ままに過ごします。

おやつを食べながらおしゃべりしたり、持ってきたおもちゃで一緒に遊んだり。

もちろん、お仕事もちゃんとやっていますよ。

ただ、絵本を読み聞かせているときにジリリリリン、なんて鳴り出すとヨモギさんはいかにもしぶしぶといった様子で「もしもし」と電話をとるのでした。

 ヨモギさんがお仕事をしている間、男の子はその向かいに腰かけて興味津々に見つめています。

しわしわの口から飛び出す、鈴の音のように澄んだ声やガラガラのしわがれ声……

目の前でころころと変わる虹色に、男の子は目をキラキラさせてヨモギさんに飛びついてきました。

「すごい、すごおい! おばあちゃん、魔法使いさんなの?」

「そんなたいそうなものじゃないわよ。ちょっと声まねをして、お客さんの気を紛らわせてあげているだけ」

 そう言っても男の子は、足をバタバタさせて「もっかい、もっかい!」とせがみます。

さっき出した声を一通り繰り返してあげると、男の子はキャッキャッとはしゃいで言いました。
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