思い出屋さんのゆううつ
 花祭りの翌日。

お昼を過ぎても男の子はやってきません。

風邪でも引いたのかしらとソワソワしていると、目の前の電話が鳴りだしました。

「もしもし、思い出屋です」

「もしもし、あー、エホン」

 高い声を無理やり低くしたような電話の相手に、ヨモギさんは首をかしげます。

「あー、僕はねえ、えーと、おじいさんです」

 舌足らずな口調にピンときたヨモギさんは、吹き出しそうになる口を慌てておさえました。

男の子です。

男の子がおじいさんの声まねをしているのです。

「おじいさんがいなくて寂しいみたいだけど、僕がいっぱい遊んでくれるから大丈夫なんだよ」

 ヨモギさんは笑いながら涙をぬぐいました。

電話の声はおじいさんと似ても似つきません。

でもそれは確かにおじいさんからの電話でした。

ヨモギさんはやっと、おじいさんとお話しすることができたのです。
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