思い出屋さんのゆううつ
「ありがとうおじいさん。声が聞けて嬉しいわ。話したいことがたくさんあるのよ」
「うんうん、何でも話していいよ」
「そうね、何から話せばいいか迷っちゃうけど、まず。今日は坊やがまだ来ないのよ。たくさんお菓子も用意したのに、寂しいわ」
電話の向こうでバタバタ、と音がします。
「今から、今すぐ行くから、待ってて!」
ガチャンと切れた電話に、ヨモギさんはふふふと微笑みます。
「さて……」
ヨモギさんは立ち上がると扉を開けました。外はもうすっかり春です。
「この貼り紙も、もっと立派なものにしなくっちゃね」
にっこりと笑うヨモギさんに答えるように、木々がサワサワと揺れていました。
(完)
「うんうん、何でも話していいよ」
「そうね、何から話せばいいか迷っちゃうけど、まず。今日は坊やがまだ来ないのよ。たくさんお菓子も用意したのに、寂しいわ」
電話の向こうでバタバタ、と音がします。
「今から、今すぐ行くから、待ってて!」
ガチャンと切れた電話に、ヨモギさんはふふふと微笑みます。
「さて……」
ヨモギさんは立ち上がると扉を開けました。外はもうすっかり春です。
「この貼り紙も、もっと立派なものにしなくっちゃね」
にっこりと笑うヨモギさんに答えるように、木々がサワサワと揺れていました。
(完)