思い出屋さんのゆううつ
「あのね、ちいちゃんパパが天国に行っちゃって寂しいよ。ちいちゃん、パパに会いたいよ」

「パパもちいちゃんに会いたいなあ。でもね、パパはいつだってちいちゃんのことを見守っているからね。だから寂しく思わなくてもいいんだよ」

 こうやってお話をして、誰かの思い出の声を売るのが思い出屋さんのお仕事なのです。
 
 ヨモギさんには色々な人から電話がかかってきます。

喧嘩したまま死んでしまった親友に謝りたいという男の人。

お母さんに結婚の報告をする女の人。

たまに「死んでしまったペットの声を聞きたい」なんて言う人もいて、そんな時ヨモギさんはひどく苦労するのです。

 電話してきた人たちはみんな思い思いに泣いて笑って、それから最後は必ず「ありがとう、ありがとう」とお礼を言いながら会話を終えるのでした。
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