思い出屋さんのゆううつ
 女の子からの電話を終える頃には、部屋中を染めるセピアがうっすらと翳りを帯び始めていました。

そろそろ夕ご飯の時間です。

ヨモギさんはよいしょと椅子から立ち上がると、戸棚からパンとチーズとミルクを取り出して部屋を後にしました。

 お家の裏、小さな花が点々と咲く草むらにまあるい石のお墓があります。

「おじいさん」

 ヨモギさんは呼びかけて、ちょこんとその前に座りました。

ここにはずっと昔に死んでしまった、ヨモギさんの旦那さんが眠っているのです。

「今日もたくさんの電話がありましたよ。最後の女の子、喜んでくれたみたいでよ
かったわ」

 お店が一段落した後、ここで夕ご飯を食べながらその日一日の出来事を話すのがヨモギさんの日課でした。
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