思い出屋さんのゆううつ
「お昼にね、フルーツとお花がたくさん届いたの。前に話したお客さんからよ。ありがとうってお手紙もついていたわ」

 ヨモギさんはぽつぽつと言葉を落とします。

「みんな、ちゃんとわかっているのね。死んでしまった人じゃなくて、私が話しているんだって。……それはそうよね。それでも、やっぱり声が聞きたいんだわ。伝えたいことがあるんだわ」

 たとえ自己満足だとしてもね、と優しく石を撫でます。

「ねえおじいさん、知ってるかしら。人はね、死んでしまった人の声から先に忘れていくんですって。だからみんな、私に電話するんだわ。でもなんだかそれって、とても悲しいことじゃない?」

 ヨモギさんに答えるように、サワサワと草木が音を立てます。

「おじいさん、私もおじいさんの声が聞きたいわ。話したいことがたくさんあるのよ」

 ヨモギさんの目から、ぽつりと涙がこぼれました。

「おじいさんの声、もう思い出せないの……」

 ヨモギさんには悩みがありました。

他の人の声は出せるのに、大好きなおじいさんの声だけ、どうしても思い出すことができないのです。

 ヨモギさんはいつも一人、寂しい思いをしていました。
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