思い出屋さんのゆううつ
 そんな毎日を過ごしていた、ある日のことです。

 トントントン

 木の扉をノックする音が聞こえてきます。

「あらあら、お届け物かしら」

 いつもの通り、電話の前で頬杖をついていたヨモギさんは、どっこいしょと立ち上がってドアを開けました。

「こんにちは」

 そこにいたのは小さな男の子でした。

思いがけない訪問者に、ヨモギさんの目がまんまるになります。

「まあまあ、かわいいお客さんだこと。何かご用事?」

「うん。僕のママがね、おばあちゃんにこれを持っていきなさいって。この前はお
世話になりましたって」

 男の子はそう言って手に持っていた箱を渡します。

 蓋を開けると、おいしそうなケーキが入っていました。

「まあ嬉しいこと。ありがとう坊や、外は冷えたでしょう。中に入って温かいお茶でも飲んでいきなさいな」

 普段郵便屋さんくらいしかこないお家です。

ヨモギさんはすっかり嬉しくなってしまって、はしゃいだ声をあげました。
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