思い出屋さんのゆううつ
 それからヨモギさんは男の子を椅子に座らせると、ハーブのいい香りがするお茶と、りんごのジャムがのったクッキー、そして男の子が持ってきてくれたケーキを綺麗に盛り付けてテーブルに並べました。

「楽しいわ。誰かとお食事をするのなんて、何年ぶりでしょ」

「おばあちゃん、一人で暮らしているの?」

「そうよ。昔はね、おじいさんと二人だったのだけど」

 二人はお茶を飲み飲み話します。

「このケーキとっても美味しいわ。坊やのママ、お料理上手ねえ」

「そうだよ。でも今日のケーキは特別なんだって。ほら、フルーツがたくさんのっかってるでしょ。ママがね、僕のおばあちゃんとお電話させてもらったからそのお礼にって」

 あら、じゃあ少し前のあのお客さんかしら、などとヨモギさんは考えます。

「ママ、とっても喜んでたよ。でも僕よくわからないな。僕のおばあちゃんは、僕が生まれる前に死んじゃったから、声を聞きたいとは思わないんだ」

「それは坊やがまだ小さいからよ。もっと大人になったら……ううん、もしかしたら大人になる前なのかもしれないけれど……とにかく、嫌でも私に電話をかけたくなる時が来るわ」

 でもその頃には私はいないかしらね、とヨモギさんは笑います。
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