スーゼントの怨霊
少年が女の霊に怯えている一方、兄は幻覚の恐怖で精神に異常が出始めていた。

落ちかけていた兄は限界を感じ、手を離してしまった。
「うわぁぁぁ!」
体は暗闇の中を加速しながら落ちていく。
寝ている時、たまに落ちる夢などをみてビクリとする事がある。
あの一瞬の出来事が長時間続いていた。

兄の悲鳴が聞こえてからドンドン木板を踏みつける音が鳴りやまない。
「止めてよ!」
少年の勇気は外からの銃声によってかき消された。
震えがとまらず、時々、自分が白目を向いて吐きそうになっているのを感じていた。
「そう言えば兄ちゃん…。」
布団の中で恐怖が薄れたのか急に兄が気になった。
そっと布団の隙間から部屋の様子を伺う。
女はもちろん、視線すら感じなくなっていた。
勢いよく布団から飛び出し、兄のもとへ。
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