きっと、もっと、知りたい。
と、次の駅で乗ってきたおばあさんに気付いて、席を譲ろうと立ち上がった瞬間。
「「どうぞ」」
同時に立ち上がったユッキーと、声が重なった。
「あら、2人ともありがとうね」
何だかおかしくて、顔を見合わせて笑ってしまった。
初めて見る、私に向けた笑顔。
それがすごく、嬉しくて。
「えっと…座ったら?」
2人立ち上がったせいで1つ空いた席を指差すユッキー。
「いや、大丈夫です!」
「そっか」
せっかく話すチャンスだったのに、どうしてもそこに続ける話題が思いつかなくて。
なにか、話したい。
ユッキーと、話すチャンスなのに。
だけど、私はあなたのこと知ってるけど、あなたは私をきっと知らない。
体育祭委員になったんだね、なんて、見知らぬ女に聞かれたら気持ち悪いだろう、とか。
後になって思えば、「その制服、西高校ですか?」とか、いくらでも話せることはあったはずなのに。
緊張して、ドキドキして、話題が思いつかなくなってしまった。