星天ノスタルジア
星天ノスタルジア
「花火、観に行こうか」
まったく予想しなかった言葉が、私の動きをぴたりと止めた。
出勤前の朝、慌ただしい時間。一分一秒を争っている状態だというのに、なんて事をしてくれる。
こんな時間に言うこと?
「花火?」
辛うじて出てきた言葉はごくシンプルな問いかけ。それ以外に答えが見つからなかったし、どんな反応をしていいのわからなかったから。
「明後日、何にも予定ないだろう?」
私に反論の余地も与えず、さぞ当たり前のような決めつけた口ぶりが憎らしい。歳を重ねるにつれて偉そうになっていくんだと改めて実感した。
もしも私が否定したらどうなるんだろう。少しだけ想像したけれど、口に出して言う勇気なんてない。
「出勤じゃなかったの?」
「休みになったんだ」
細やかな私の抵抗をさらりとかわして、彼はリビングのソファに体を預けたままテレビを観ている。そんな余裕があるなら少しぐらい私を手伝ってくれてもいいのに。こんなに慌ただしく動き回ってるのを見て見ぬふりして。
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