秘めるはずだった初恋
それからは学校から離れるのが名残り惜しくて、ずっと取り留めのない話を沢山した。


だけど、時間は無限じゃない。


後ろ髪引かれる思いで三年間過ごした学び舎を後にし、手を繋いで駅前まで向かった。


晴子ちゃんと繭ちゃんは高校の近所に住んでいるけど、ここから三つ隣の町出身の私は電車通学だった。


「またね」
「元気でね」
「体には気を付けてね」


卒業式で散々泣いたにも関わらず、私達は抱き合ってわんわん泣いた。


夕方に来る電車はたった一両しかないのに、車内は私を含める生徒数人と、高齢者の人が数人しかいない。


四人が座れるボックス席に一人座り、窓から見える景色を眺めていた。


電車は学校の最寄り駅から四個目の駅で停車し、車掌が「間もなく発車します」とアナウンスすると同時に。


「待って!」


男の子の声が聞こえた。


その声を聞いた瞬間、私の心臓は止まりかけた。
姿を確認しなくても、地元のものとは違うイントネーションですぐに分かった。


声の主は敏くんだった。


敏くんは息を切らしながら歩いていき、私が座っている所から前列右側のボックス席にどかっと腰を降ろした。


この駅から乗ってきたと言うことは、敏くんの友達の香月(かつき)くんのお家に行ってたのだろうか。


私はドキドキしながら、息が上がっている敏くんを見つめた
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