秘めるはずだった初恋
私達は好きな食べ物や、誕生日、血液型などを質問し合いながらおしゃべりをした。


「有理子さん、大学どこ?」

「私は奈良の若葉(わかば)大だよ。敏くんは?」


本当は噂で知っているけれど、会話のキャッチボールをしていたくて敢えて聞き返してみた。


「嘘……俺と一緒やん!」

「えっ!?」


同じ大学なの!? 噂では大阪の咲島(さきじま)大学のはず。
敏くんならそこでも余裕で受かるのに、どうしてランク下げてまで変更したのかな。


「学部は?」

「文学部だよ」

「俺は経済学部やから、何個か被る講義があるかもな」


夢みたいだ……敏くんと同じ大学に通えるなんて。
私は嬉しさのあまりついつい口走ってしまった。


「大学生になっなら、私と仲良くしてくれませんか?」

「マジで!?」


敏くんは私の言葉に酷く驚いたかのように、切れ長の瞳を見張ったまま私を見つめていた。


まずい、調子に乗り過ぎたかも。
キモいって思ったかな……。


私は、敏くんが自分を気持ち悪いと感じていると思い込み、慌てて頭を深く下げて謝った。


「ごめんなさいっ。今まで話したことほとんどないのに、仲良くしてなんて、気持ち悪いよね」


敏くんの顔を見るのが怖くなって、頭を下げたまま上げようとしなかった。


そんな私に、敏くんは「頭上げえ」と話し掛けた。


「違うんや。びっくりしたのはほんまやけど、引いたん違う」

「え……」

「有理子さんに仲良くして言われて嬉しかってん……有理子さん俺のこと嫌ってる思てたから……」


私が敏くんを嫌ってる?
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