秘めるはずだった初恋
目を丸くさせて、首を傾げる。


「二年の時、挨拶しても俺の前だけぎこちなかったし、話し掛けても笑わへんから、嫌われとるって思った」


敏くんは私から視線を逸らしたままぽつりと呟いた。


知らなかった……敏くんがそんなことを思っていたなんて。私のことなんて、認識すらされていないものと思っていた。


もし、敏くんに嫌われたら立ち直れないけど、私が敏くんを嫌っているって誤解されるのも辛いよ。


「私……嫌いじゃないよ……」


気付けば散々腫れぼったくなった目から涙がじわりと浮かび上がって、ポロポロと頬を伝い落ちていた。


告白なんて無理だと思っていた。


だけど、今は敏くんに私の気持ちを知って欲しいの。


「私、敏くんの前になると緊張してしまうの……他の人の前だと笑えるのに、胸の鼓動が暴れて上手く笑えなかったの。私……挨拶してくれた時嬉しかったよ。消しゴム拾ってくれた時も、チョコを受け取ってくれた時も」

「そうやったんや……」


震えた涙声に加えて、吃り気味だけど、敏くんは私の言葉に耳を傾けてくれた。


「だから、嫌いじゃないよ。ううん、好き、だよ……?」


真っ直ぐ敏くんの目を見つめながら、ずっと胸に秘めてきた二文字を言葉にして伝えた。



ついに、敏くんに想いを打ち明けてしまった。
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