秘めるはずだった初恋
私は今人生で最も緊張している。大学の面接試験よりもずっと緊張している。


私の想いは迷惑じゃないのか不安で仕方ない。


固唾を呑んで、無言を貫く敏くんを見つめていると、敏くんの切れ長の瞳は私を映した。


「有理子さんの気持ち、よおわかったわ。すげー嬉しい――――でも、ごめんな」


やっぱりそんな気がした。
実は両想いでした、なんて少女漫画や恋愛小説のように起こるわけなんてない。


「いいの。私は、聞いてくれるだけで充分だよ」

「俺な、有理子さんのこと好いとるよ。でも、それは男女の意味やない」


うんうん、と相槌を打ちながら敏くんの話を聞く。


「こんな俺を好いてくれてありがとう」


敏くんは私の両手を優しく握り締めたまま、お礼を言ってくれた。


「私こそ、ありがとう……」


私はポロポロと涙を流したまま笑顔を浮かべた。




それから、電車は動き出し、二十分後に私の地元の最寄り駅に到着した。


「春から友達してよろしくな」

「こちらこそ」


敏くんに手を振りながら、電車から降りた。


発車してどんどん遠くなっていか電車をホームからじいっと見つめる。


胸に秘めた想いは伝えたけど、私の中で新たに一つの秘密が生まれた。


それは、敏くんへの想いを抱き続けていくこと。


「好きだよ……」


いつかあなたじゃない人を好きになれる日が来るまでは、好きでいることを許してください。





end.
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