職場恋愛
「結、明日中番だよね?ビール飲む?」


晩ご飯を食べ終えて少し喋っていたら航が缶ビールを持って来てくれた。


「飲む!」


彼氏の家でお酒を飲むなんてちょっと前の私じゃ想像すらできなかったな。


「結さ、國分さんに膝枕してもらってたの知ってる?」

2人でチータラつまみにビールを飲んでいると、今日香織に教えてもらった衝撃の事実をまた教えられた。


「…香織…真鍋さんから聞いた。明日本当に会いたくない」

「真鍋さん、香織って言うんだね。名前で呼ぶことにしたの?」

「…うん。さん付けはよそよそしいからって」

「そうなんだ。なんかいいね、そういうの」


航の安心したような顔は、例の國分さん膝枕事件の日にも見たなぁ。

本当に心が綺麗なんだろうな、航は。


「國分さんにしがみついた時はまじでびっくりしたんだよ」


私だってびっくりだよ!


「何がどうなって膝枕に行き着いたの…?」


全く覚えていないそれについて詳しく知っておかないと、後で困る気がする…。


「結に告白してもらった後に國分さんを見つけて、話しながら戻ったら自然な流れで結と真鍋さんのお隣に座ることになったんだよ」


うんうん。


「焼酎一気飲みしてる結の隣に國分さんが座ったんだけど、真鍋さんとボトル空けたちょっと後に急に結が國分さんの肩にもたれかかってね」


うんうん。


「國分さんが結の肩を持って真鍋さん側に倒そうとしたら、その手を振り払って強引に膝枕してもらったのね」


うん?


「そこで真鍋さんはトイレに行っちゃったんだけど、あぐらをかいてた國分さんの足に腕を絡ませてがっちり捕まりながら、俺への文句を言ってたよ」


てことは?


「國分さんは私がフられたことを知ってるの?」


「え?……あぁ、そうだね」


少し考えてからひらめいたかのように頷いた航。
天然かって。


いやそれはつまりやばいんじゃない?


「それで真鍋さんが戻って来てから俺と一緒に結を引き剥がそうとしたんだけど、いやこれが馬鹿力で。全っ然離れない。諦めて10分くらい放置したら急に起き上がって、國分さんの顎と結の頭激突!めっちゃ痛そうだったけど大丈夫だった?」


覚えてません!


「國分さん、怒ってた?」


「一瞬怖い顔したけど、怒ってはないんじゃない?困ってはいたけど」


膝枕だけじゃなくて頭突きもしたのか、私は。これはなんて謝罪しよう。


「國分さんのあんな困った顔初めて見てさ。まじで面白くて超楽しかったんだよね」


國分さんへの行為は失態そのものだけど、航のこんな楽しそうな顔を見れたから良かったのかも…。
< 100 / 543 >

この作品をシェア

pagetop