職場恋愛
頼んだものが運ばれてきて乾杯した。
お通しをつまんでいると航の携帯が鳴った。


「島田だ」

画面で相手を確認して出ようとしない航に「出なよ」と言ったら渋々出た。

話したくないのかな?

「もしも…」

『どこにいるんだよお!!!』

スピーカーにしているわけじゃないのに聞こえる島田さんの声。

でかっ。

「会社にはいない」

『じゃあどこ!?』

「さー?」

『わかった。デート中だな』

「うん、だからさよなら」

『ちょまっ!俺も行きたい!』

「無理」

『俺も行きたい!』

「無理」


なんか、島田さんにだけはそんなに優しくないみたい。
なんていうか、素って感じ。


『ねぇお願い!』

「ちょっと待って。…聞こえた?」

「うん、ばっちり。呼んでいいよ?」

申し訳なさそうに私を見た航にオッケーを指で作って見せた。

「島田うるさいよ?」

「知ってる!大丈夫!」

電話ですらうるさいし。

「もしもし?いいって」

『さすが荒木ちゃん。で、どこ?』

嫌々場所を言って電話を切った航は盛大なため息をついた。

「うるさいのが来る…」

「島田さんと航って仲良いよね」

「そう?普通じゃない?」

「なんか航、素って感じ」

「そうかな」


自分じゃ分からないと言うような顔をした航に、そうだよ、と心の中で言った。
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