職場恋愛
あんな國分さんだからまさか逢坂さんをマネージャーとして付けてくれるなんて全く想像していなかった。
やり方を教えてほしいと言った時のあの言い草、絶対なにも教えてもらえないと思ってた。
それが1年先輩の人たちの中で1番仕事ができる逢坂さんに教えてもらえるなんて。

他に逢坂さんを必要としているところがあるはずなのに、こんな私に1日捧げてくれるって申し訳ないな。
ちゃんと吸収しなきゃ。


「まずは練習しよっか」

そう言って連れて来られたのは在庫を保管している倉庫。
練習って…なんの？


「荒木さん、笑って」

「えっと、こうですか？」

あまりにも突然すぎてつい引きつってしまう。

「違う。こう！ここを上に上げるの」

自分の口角を人差し指で押し上げて見せる逢坂さんは意外と熱血なのかも、と思えた。

「もっと自然な笑顔で。そう！その顔！それをキープしたまま声を高くしていらっしゃいませ」

「い、いらっしゃいませ」

「だめ！ちゃんと人と話すように、伝えるように」

「いらっしゃいませ」

「そうそうそう！できるじゃん！！」

逢坂さんが相手だからできるんだよ…。
お客さん相手じゃできない。
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