職場恋愛
大急ぎで家電コーナーに行くと、レジには國分さんと携帯コーナーの人が数人いて、売り場には島田さんとつり目さん、他見たことのない人が3,4人いるだけで、店内がとても広く感じた。


「やっと来た。インカムで呼んでも返事するの山ちゃんだけでいじめかと思ったんだけど」


不機嫌そうにボヤいたのは島田さん。
店内を走り回ったのか息が上がっている。


「ゆーちゃん家電?」


近くにいたつり目さんに言われてハッとする。


「あっ違いました!!携帯です!うっかり…」


「んじゃ一緒に戻ろ〜」



島田さんに比べてあまり疲れてなさそう…というか全然疲れてないつり目さんの後を付いて行く。

同時に、見たことのない方々も後を付いて来た。

携帯の人じゃない…よね?
どこの人だろう?


携帯と家電はフロアが近いことからお互いを助け合うことがよくあるんだけど、それ以外から手伝いに来たり、行ったりするのは入社から4ヶ月いてまだ見たことがなかった。


まぁでも、会社全体だと100人前後いるって聞いたことがあるから知らない人がいて当然なんだけど。

むしろ半分くらいしか知らないんじゃないかな?


携帯コーナーに着いて後ろを見たら誰もいなくて、あの人たちはいつの間に、どこへ消えたのだろうと不思議に思った。


「いや〜やっぱ意識レベルが違ったね〜」


感慨深そうにつり目さんが言ったけど、一体何のことだかさっぱり分からない。


「ほら、何人かいたでしょ?家電でも携帯でもない人たち」


あぁ、ちょうど私が思ってた人たちのことね。


「あの人たちはどこの人なんですか?」


今日も絶好調なつり目さんのツンツンヘアーを見ながら聞いてみた。



「簡単に言っちゃえば何でもできる人たち。いつもは上とか下で照明コーナーとかカメラ系、パソコン系、営業、PC作業とか、とにかく色々やってる。パソコンは携帯にもちょっとあるけど、半分こなんだよね。
大抵はどっかのリーダーだった人なんだけど、まぁーエリートだよね。将来は責任者とかになるような人たち。そんなのがいるなんて知らなかったでしょ〜」


続けて。


「会社の部署は大きく分けて4つ。
家電と、携帯と、ゲーム・おもちゃと、その他。俺らは便利屋って呼んでるけど、特に名前はない。ここみたいに内容が1つじゃないからね。上の人たちは『トップ』とか『特別班』とか呼んだりしてる。
あ、ほら、國分さんは本社の便利屋でリーダーやってたからここの責任者になったんだよ〜。一瞬で降格させられたけど」



得意げに話してくれたつり目さん。


そうなんだ。
上には上がいるってやつね。


「便利屋の人たちはプライドの高いお医者様タイプばっかりだから俺は絶対一緒に働きたくない。分かりやすく言っちゃえば國分さんがたくさんいる感じ」


すっごく分かりやすい例えをありがとうございます!
私もそんなところでは働きたくありません!
その前に頭が足りなくて働けませんが。


「あの〜ほら、家電のリーダーいんじゃん。あれがまさにそのタイプ。裏表激しいのとプライドの塊な感じ。すっごい苦手。無理。話したくもない。生理的に受け付けない」


安井さんのことだろうか。
裏表激しいかな?
プライドの塊っていうのは分からなくもないけど、なんか人を見下す感じはあるよね。

前に店長代理に帰れって言われて、そのまま帰るわけにはいかないと思って仕事を探してたら、安井さんに『お願いだから帰って』とお願いされたこと以外は接点がなくて、つり目さんの言うことが半分くらいしか分からなかった。



そう言えば安井さんは大丈夫だろうか。


あんなことをさせられて仕事どころじゃないよね。
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