職場恋愛
side 安井
オープン20分前、乱暴に開いた休憩室の扉から姿を現したのは店長代理の寺内さんだった。
一目見てどれだけ怒り狂ってるのかが分かる表情で心臓が嫌な音を立てた。
何しに来たんだよ。
「リーダーはどいつだ」
まさか単刀直入に俺を指名されるとは思わなくてすぐに返事ができなかった。
だけど周りの視線が答えになったらしく、寺内さんは俺を見つけて近付いてきた。
「お前も頭悪そうだな」
172センチある俺よりも10センチくらい高そうな寺内さんに見下ろされながら言われて、正直ムカついた。
何でこんな奴に頭悪いなんて言われなければいけないのか。
「なぜ返事をしない?リーダーじゃないのか?」
痛いところを突くのはこの人の得意技。
昔からそうやって何人も辞めさせてきた。
「…すみません。家電のリーダーの安井です」
仕方なく名乗ると紙製のファイルの中身を見せてきた。
取寄せリストだ。
でも、中身はぐちゃぐちゃに破かれていて、ほとんどの字が読めなくなっていた。
「え…」
「え、じゃねーよ。なんでこんなことになるんだ?あ?」
いや、知らねーよ。
昨日は綺麗だったんだから、俺が帰った後で誰かがやったんだろ。
「…お前が使えないゴミだからだろ?」
俺の左肩に手を置いて放たれた言葉に殺意が湧いた。
そうだ。リーダーは俺だけじゃない。
「もう1人のリーダーが何か知ってるかもしれません」
逢坂に押し付ければいいだけの話だ。
実際俺は何も知らないんだから、俺が悪いことにはならないだろう。
「お前はゴミ中のゴミだな。下の人間になすりつけて逃げようってか」
ほらまた。
痛いところを突いてくる。
「…そんなつもりは」
あったけどな。
「お前の考えてることが手に取るように分かるのは俺が天才だからか?
それとも、お前が馬鹿だからか?」
寺内さんが言いたいのは明らかに後者。
俺も分かるよ、あんたの考えてること。
「新入社員にも聞いてみます。例えば、荒木とか」
あいつは家電の中で1番使えない人間だから何か知ってるかもしれない。
説教ばかりされてむしゃくしゃして取寄せリストだなんて知らずに破り捨てたのもしれない。
あの程度の馬鹿は俺には到底理解できない程の問題を起こす。
「荒木?あのブスか」
ブスと聞いて思わず笑いそうになった。
荒木に似合いすぎてとても面白い。
ちょうどその頃、噂の荒木が休憩室を覗きにきた。
空気が汚れるからそれ以上入らないでもらいたい。
狙い通り標的を荒木に移せたことで喜びに満ちていたのに、奴はそう簡単な人間ではなかったことを思い出した。
オープン20分前、乱暴に開いた休憩室の扉から姿を現したのは店長代理の寺内さんだった。
一目見てどれだけ怒り狂ってるのかが分かる表情で心臓が嫌な音を立てた。
何しに来たんだよ。
「リーダーはどいつだ」
まさか単刀直入に俺を指名されるとは思わなくてすぐに返事ができなかった。
だけど周りの視線が答えになったらしく、寺内さんは俺を見つけて近付いてきた。
「お前も頭悪そうだな」
172センチある俺よりも10センチくらい高そうな寺内さんに見下ろされながら言われて、正直ムカついた。
何でこんな奴に頭悪いなんて言われなければいけないのか。
「なぜ返事をしない?リーダーじゃないのか?」
痛いところを突くのはこの人の得意技。
昔からそうやって何人も辞めさせてきた。
「…すみません。家電のリーダーの安井です」
仕方なく名乗ると紙製のファイルの中身を見せてきた。
取寄せリストだ。
でも、中身はぐちゃぐちゃに破かれていて、ほとんどの字が読めなくなっていた。
「え…」
「え、じゃねーよ。なんでこんなことになるんだ?あ?」
いや、知らねーよ。
昨日は綺麗だったんだから、俺が帰った後で誰かがやったんだろ。
「…お前が使えないゴミだからだろ?」
俺の左肩に手を置いて放たれた言葉に殺意が湧いた。
そうだ。リーダーは俺だけじゃない。
「もう1人のリーダーが何か知ってるかもしれません」
逢坂に押し付ければいいだけの話だ。
実際俺は何も知らないんだから、俺が悪いことにはならないだろう。
「お前はゴミ中のゴミだな。下の人間になすりつけて逃げようってか」
ほらまた。
痛いところを突いてくる。
「…そんなつもりは」
あったけどな。
「お前の考えてることが手に取るように分かるのは俺が天才だからか?
それとも、お前が馬鹿だからか?」
寺内さんが言いたいのは明らかに後者。
俺も分かるよ、あんたの考えてること。
「新入社員にも聞いてみます。例えば、荒木とか」
あいつは家電の中で1番使えない人間だから何か知ってるかもしれない。
説教ばかりされてむしゃくしゃして取寄せリストだなんて知らずに破り捨てたのもしれない。
あの程度の馬鹿は俺には到底理解できない程の問題を起こす。
「荒木?あのブスか」
ブスと聞いて思わず笑いそうになった。
荒木に似合いすぎてとても面白い。
ちょうどその頃、噂の荒木が休憩室を覗きにきた。
空気が汚れるからそれ以上入らないでもらいたい。
狙い通り標的を荒木に移せたことで喜びに満ちていたのに、奴はそう簡単な人間ではなかったことを思い出した。