職場恋愛
お医者さんが来て簡単な検査を受けた航。


「うん、大丈夫そうですね」


入院はしなくていいみたい。

ただし、明日は仕事を休むことと自宅での絶対安静を約束するように、と強く言われていた。

「久しぶりに帰って来なさいよ」


お母さまに言われて航はじっくり考えていた。

「…………」


数分考えてチラッと私のことを見た。
あ、もしかして私のことを気にしてくれてるのかな?


なら…。


「私も帰るね」


帰らないけど。


「結も一緒に帰っていい?」


逢坂家の方々に確認した航。
私の話聞いてました?


「もちろん」


不思議そうな顔をしたお母さまだけど、すぐに優しく微笑んでくれた。

まるで女神様のよう。


「そ、そんな、迷惑じゃ…」


「結ちゃんは私の部屋ね!」


……聞いてる?
ゆずはちゃんは私の手を取って喜んでくれたけど…。
迷惑極まりなくない?



「車椅子借りて来る」


ずっと黙っていたお父さまが静かに部屋を出た。


「結ちゃん、晩ごはん何食べたい?」


「わ、私はなんでも…」


「じゃあ〜、ママの得意な肉じゃがと〜」


ニコニコ楽しそうにあれこれ献立を立てるゆずはちゃん。
この子、何歳くらいだろう。
航が24歳になったから…。

20歳前後かな?
いや、それにしてはなんか幼いというか…なんというか。

顔立ちは大人っぽいんだけど…。


「好きな食べ物は?」


「えっと……たまごやき」


「分かる!!ゆずもたまごやき大好き!」


興奮してるからか、一人称が私からゆずになった。
こっちがいつもの一人称なんだろうな。


「お兄ちゃんのたまごやき食べたことある?」


「…うん」


「世界一美味しいよね!!!」


確かにおいしかった。
すんばらしくおいしかった。


でもこれは…。
明らかにブラコンだ。
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