職場恋愛
「小論文が書けないの。教えて?」
全然テストの点数関係ないじゃん。
ダイニングテーブルに私と航が隣り合わせで座って、航の真ん前にゆずはちゃんが座っている。
パパさんはリビングでソファーに腰掛けてテレビを見ていて、ママさんはキッチンで晩ご飯の準備をしている。
「起承転結」
短く答えたのは航。
うん。そうだね。間違ってない。
「ねー。ゆず真剣」
「兄と結は付き合ってる。
結が家に来た。結は料理が得意じゃない。
でもお菓子は作れる。みんなでお菓子を作った。
おいしかった。
はい。できた」
航はめちゃくちゃ簡単すぎる文章を作った。
それもめんどくさそうに棒読みで。
こんな航、見たことない。
「お兄ちゃん、それ0点だよ」
眉間にしわを寄せながらゆずはちゃんが採点する。
そんなゆずはちゃんをよそに、航ママさんが淹れてくれたコーヒーを飲みながらテレビに目を移した航。
「おにーーちゃんごめんなさい許してお願い教えてください。100点満点だから!!もう少し分かりやすくできれば丁寧に!!!」
どうやら顔を背けたのは怒ったサインだったらしく、途端に懇願し始めた。
顔の前で手を合わせるゆずはちゃんを見てニヤリと笑った航はコーヒーをテーブルに置いた。
「マッサージ5分ね」
「よろこんで!!!」
意外と優しいペナルティーにうんうんと頷くゆずはちゃんは可愛い。