職場恋愛
階段めがけてズカズカ歩いていると、近くにいた青葉さんが急にバックしてきて突撃してしまった。


ちゃんと後ろ確認しなさいよ。
もう、ムカつくなぁ。


「あ、悪い」


顔だけ私に向けて謝る青葉さんを睨む。


「別にいいのでどいてください。そこにいられると通れません」


「そんなに怒るなよ。わざとじゃないっつーの」


ぶつかられたことでイライラしてんじゃないのよ。
それくらい分かって。


「いいからどいてください!!」


自分でも驚くくらい大きい声を出してしまって、周りのお客さんたちにも見られた。

もう、本当に最悪。
こんなんで喚くとか、子どもじゃん。


イライラし過ぎて泣きそう。

耐えて。耐えなさい、私。
ここは売り場。お客さんもたくさんいるんだから。


こんなに情緒不安定になったのは絶対店長代理のせい。
なにもあんなに怒らなくても良かったのに。


「なになに、泣くの?勘弁して」


泣かれたくなかったら早くどけよ。
邪魔。


「俺が泣かしたみたいになるからやめてくれる?」


やっとどいた青葉さんをもう1度強く睨んでそこを通ろうとした。


「ねえ。泣き顔で歩かないで」


は?
まだ泣いてないんだけど。


青葉さんに腕を掴まれて地味に痛い。


「はい、これあげるから拭いてから通って」
< 215 / 543 >

この作品をシェア

pagetop